市川よみうり2007年1月
いじめは絶対に許さない=教委が取る対策の近況「決してなくならない」現実を何とかしようと、教委や市民がいじめ対策に取り組んでいる。国のいじめ緊急対策後、市川市と浦安市教委がどのような取り組みを進めたのかをまとめた。
 いじめは許さない暴力、言葉での威嚇、ひやかし、仲間はずれ、無視など、市川市教委が平成17年度に把握できたいじめの件数は、小学校73件、中学校103件で、合計176件。同16年度は206件、同15年度は166件で、特に増加傾向は確認されていない。
 しかし、全国で相次ぐ事件や、それを受けた取り組みなどにより、「『いじめは存在する』を前提に、学校生活の中で、個々の児童生徒の状況を注意深く見守り、学校全体とて『いじめは絶対に許さない』という意識がさらに高まってきている」と市教委は見る。児童生徒についても、「『いじめは許されない』『いじめに加担しない』『いじめを見て見ぬふりをしない』との意識化が図られてきている」と話している。
教育委員会の対応 市教委は、全国でいじめによる自殺が相次いでいることを受け、11月2日に市内全市立小・中・養護学校の教頭を対象とした「いじめの問題への取組の徹底」について臨時会議を開催。県から示された@取組の再点検A教職員の研修Bいじめをテーマとした「いのちを大切にするキャンペーン」―などの実施が盛り込まれた「いじめ緊急対策実施要項」について、充実・強化の徹底を図ったという。
 また、同月7日から17日にかけては、全校に配置されている「特別支援コーディネーター」や「ライフカウンセラー」、生徒指導主任、園長・校長、音楽担当教諭などをそれぞれ対象とした会議を開催。取組の説明、問題対応への役割を話し合い、各職種層への周知を徹底したという。
学校での対応市内全校では、教職員を対象とした研修を実施するとともに、実態や指導の方向性などの再確認、「いのちを大切にするキャンペーン」などを実施。そのほか、毎月児童に「学校生活は楽しいですか?」「困ったことはありますか?」といった項目に記入してもらうことで早期対処を図る「生活振り返りカード」の導入や、悩みを抱える生徒の情報をまとめるワークシート活用スキルの研修など、独自の対策を行っている学校もあるという。
 「いのちを大切にするキャンペーン」の内容は、児童・生徒の意見を反映しながら学校ごとに決定。小学校では▽「ウザい」「キモい」「死ね」など、児童が挙げた「言われてイヤな言葉」の撲滅を目指す「きたない言葉をなくそうキャンペーン」の実施▽いじめをテーマとした標語作成▽命の大切さや思いやりについて、全クラスで道徳の授業を実施―など、中学校では▽意見交換の場に地域の人が参加する全校道徳の実施▽生徒会を中心としたいじめに対するスローガンの決定▽いじめをなくす行動に賛同する人がその証としてオレンジのリボンをつける「オレンジリボンキャンペーン」の実施―などに取り組んでいる事例があるという。
 
いじめをなくそう=オレンジキャンペーン市川市立妙典中(太田和誠校長、生徒749人)と同南行徳中(菅澤龍之助校長、生徒667人)の生徒会は、生徒自らいじめをなくす“証”にオレンジ色のリボンを2つに折って安全ピンで留めるオレンジ(リボン)キャンペーンを、全校生徒に呼びかけている。妙典中では、「やさしさの花を咲かせよう」という生徒会のスローガンの下、「いじめをしない、させない、見逃さない」のキャッチフレーズを掲げて取り組み、リボンは11月13日から廊下のトレイに置いて賛同する人が自由に手にできるようにした。生徒の6〜7割がリボンをつけている。
 板垣敬太生徒会長(2年生)は、「いじめによる自殺が全国で起きているが、妙典中からも出したくない。そのものについて生徒みんなが考えるきっかけになれば。いじめを止めるのは難しいかもしれないが仲間がいる。リボンはその証」と期待を寄せている。金子敏郎教頭は「ほとんどの子供がつけると思ったが、つけていない子供もいる。いじめや、自分の発言や行動について深く考えているからこそ、つけるのをためらっている証拠ではないか」とみている。
一方、南行徳中では、新生徒会が「居心地のよい学校」「いじめのない学校」を掲げる役員で9月に発足。「たとえ学校にいじめがないとしても、これからもいじめが起きないように」町直也会長(2年生)と、生徒会役員が手作りで全校生徒分のリボンを用意し、12月5日からキャンペーンを開始した。
同キャンペーンに参加するには「いじめをなくすことに参加する」誓約書への署名が必要。町会長は「簡単にリボンがもらえるほど、簡単な気持ちでは困る」とあえて参加への敷居を高くしたが、参加者は半数を超えている。深田萌百副会長(同)と小川拳副会長(同)は「以前と比べて、みんなの気持ちのもち方が変わり、いじめに対して関心をもっていると思う」とみる。
 リボンキャンペーンは現生徒会の任期満了(来年9月)まで続くが、今後、いじめに関する意見や要望を投函してもらう意見箱を設置するアイデアも温めている。

イノシシ「2007」スタート=4300人が新成人・市川市成人の日の8日、市川市新成人の集いが同市文化会館で開かれ、会場に集まった大勢の新成人たちが新たな門出を祝った。
 天候にも恵まれたこの日、会場周辺は色鮮やかな振袖、はかま、スーツなどに身を包んだ新成人たちでいっぱい。友人たちと久々の再開を楽しみながら、会話に花を咲かせていた。
 式典は、ダンスグループ「Fanta je☆」(ファンタジスター)のチアリーディングで華やかに幕開け。続いて、新成人3人の夢に向かって努力する姿が、ビデオ「夢追い人」で紹介された。
 今年の新成人は、男性2279人、女性2062人の合計4341人。昨年よりわずかに増えたが、来年以降は再び減少傾向が続くと見られている。

不法投棄などの防止策=外環道工事業者が周辺巡回昨年12月15日から今月末まで、市川市の堀之内地区や小塚山トンネルの外環道路工事を受け負った事業者が、両地区の工事現場周辺を巡回パトロールしている。同時期に増加が予想される不法投棄や放火などを防止することが目的。パトロール実施直前の1か月間で10件あった両地区の不法投棄は、実施後の1か月間には2件に減少したという。
 パトロール範囲は、小塚山公園の西側から東に1.5キロメートルほど進んだバス通りまでの工事用道路周辺。鹿島・西松JV、堀建設、小雀建設、馬渕建設の四者が持ち回りで、1周5キロメートルほどのコースを1日5回、「パトロール実施中」のステッカーと黄色い回転灯を付けた車両で巡回している。
 外環道路建設予定地では日ごろから国土交通省の職員がパトロールを行っているが、住宅の移転が進んだことで人通りも少なくなっており、周辺住民から治安対策を望む声は多い。事業者は2月以降についても、「不法投棄が再び増えるようであれば、パトロールの実施を検討したい」と話している。
 
風俗環境改善に向けて=浦安・街全体で初の巡視街の環境をよくしようと市や警察のほか商店会、自治会、事業者が昨年から連携して取り組んでいる浦安市風俗環境浄化推進協議会は19日の夜、東西線浦安駅周辺で初の風俗環境浄化パトロールを約40人で実施した。商店会も含めた街全体のパトロールは初めて。
 市民が安全で安心して過ごせる街づくりを目指して、青少年の健全育成、暴力団の排除、不法就労に当たる外国人の配慮をポイントに、繁華街やアルコールを出す飲食店、パチンコ店、若者が集まりそうなゲームセンターなどの店舗を巡回し、店主に協力を求めた。
 地元の店主や住民が参加するパトロールは多くが顔見知りの間柄。「ご苦労さまです」と、順調に進む半面、金曜日の夜だったこともあって啓発リーフレットを受け取るだけの店舗もあった。商店会員は「先の警察の摘発もあり、風俗環境としては気になるところはなかったが、夜間の路上喫煙が徹底されていなかったことが残念だ」、彦田防犯協会会長は「若い女性に声をかける黒服の男性がいなくなり、安心して歩けるようになったのでは。バイパスの路上駐車も減った」という。

学生に出征者の気持ち伝える=市川「戦争体験を語る会」「どんな理由があろうと、二度と戦争をしてはいけない」―。
 市川市国府台の和洋女子大で10日、「戦争体験を語る会」(忍田吉正代表)の会員4人が学生たちに太平洋戦争当時の体験や市川の街並みを語る授業が行われた。
 人文学部発達科学科の教育史演習の時間に行われたこの授業は、指導教授である高野俊さんが同会に依頼して実現。千葉商大の学生や同大付属高の生徒、近隣の住民たちも参加し、履修学生と机を並べて熱心に耳を傾けた。
 講師を務めた会員たちは、和洋女子大のある国府台一帯が明治18年から昭和20年まで軍隊の街で、国府台や市川の駅は兵隊でいっぱいだったことなどを紹介した後、当時の様子を描いたドキュメンタリー番組をスクリーンで鑑賞。学生たちからの「出征前の訓練中は、本当はどんな気持ちでしたか」「家庭では戦争についてどのように考えていましたか」などといった質問にも、「お国のために死ぬ以外の人生はないという気持ちだった」「親は本心では子供を戦場に送るのはイヤだったと思う。入隊時に母親は赤飯を炊いていたが泣いているようだった」と、ありのままの感情を答えた。
 会員たちが出征時にもらったという寄せ書き入りの日章旗を直接手で触れ、「あれだけ辛い思いをしたのに60年以上も持ち続け、“宝物”と言っていた。それだけ大事なものだとわかった」と、しみじみと感じ入る学生たち。「リアルな話が聞けて、いい経験になった」と戦争の悲惨さを実感していた。       
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