市川よみうり連載企画


■市川中学・高校教諭 石井 信義■

  いよいよ動き出してきた国分川調節池整備計画真間川水系域での出水を防ぐ調節池整備は、市の柏井調節池がすでに出来ており、長い期間、用地買収、掘削を進めていた一六 の県の大柏川第一調節池掘削もいよいよ大詰めを迎え、三年後には最終整備を終える段階になってきた。そして県が計画し、一部掘削をしていた国分川調節池造成もいよいよ全面的な池整備事業が動きだしてきた。春木川では拡幅の用地買収も進行して、国分川調節池の整備計画の検討準備会も七月から発足した。大柏川第一調節池を大きく上回る規模でもあり、真間川水系での都市型洪水対策がさらに前進することになろう。

 国分川調節池は一九九九年夏までに一部の低湿地状であった計画用地に暫定の池が掘削された。今年その北側の整備も行われ、池周辺の植生回復も順調のようである。ヨシ、ヒメガマ、サンカクイ、ウキヤガラなど挺水植物も多くなってきた。そのために池内での水禽類の繁殖や堤のヨシ、オギの草地、裸地での繁殖も多く見られる。九日の調査では、池とその周辺の堤などで九種の繁殖が確認できた。さらに、今回の目撃はなかったが周辺の用地買収が済み、金物のフェンスで囲まれた空地ではキジの子育ても見られている。

 現在池内では二十三種三百羽を越す野鳥が確認できるが、なかでもカイツブリが二組繁殖し小さな雛が二羽、三羽と親の後を一生懸命に泳いでいる。バンも親が繁殖行動をしており、周辺の草地で繁殖したカルガモも若鳥たち多数が入っており、五十五羽の数は今夏では市内で最も多い数である。

堤のヨシでは繁殖を終えたオオヨシキリやセッカの姿や声が複数いる。さらに子連れのセグロセキレイやハクセキレイ、コチドリ、ヒバリも目撃できる。昆虫類では池に密接なトンボ類も現在五−六種見られる。

 国分川調節池の計画用地内では五〇ミリ対応の調節計画で公立中学校も残るし、今秋から地元の関係者を混じえての会合も計画されている。バランスのとれた計画を期待している。
(2001年7月14日)

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暑い夏、ウナギの話七月に入ってから市川では雨らしい雨もなく連日三十五度前後の猛暑が続く。関東地方の梅雨明けは七月十一日と発表されたが、実際には七月一日あたりには明けていたのでは、と思ってしまうほど晴天が続いている。東京では六月二十七日から七月二十五日までで気温が三十五度以上の日が七日、雨量は平年の十分の一、平成六年以来の酷暑と言われている。

 暑いと当然、水辺が恋しくなる。真間川、江戸川、東京湾と市川は水と緑の深い街だが、真間川は構造の問題と汚れ、東京湾も垂直護岸が多く、構造上から気軽に水辺まで入れない。そのなかで江戸川に、水辺まで近づける場所が比較的多く、水が汚れていない。当然、水面下では魚類をはじめとする水生動物の動きは目につきにくいが、実際には大小さまざまな魚が住んでいる。江戸川から根本水門を経て、あるいは東京湾から遡上する魚が真間川でも見られている。ボラの数が多く、アユも真間川から大柏川にも入ってくる。

 ボラは小さい群れから三〇センチ強、マゴイも三〇センチ大がよく見られる。大柏川との合流点の浅間橋、派川大柏川との合流点の三角橋、国分川との合流点の菅野橋あたりが特に魚群が多い。しかし、ボラやマゴイの死体も川面に浮いて流れている事も多く、七月十二日にはボラが七匹、マゴイが一匹、いずれも三〇センチ大のが真間川で目撃された。特にマゴイにはアカミミガメが一匹食いつきながら流れていた。アカミミガメが元の場所に戻るためには食べた餌以上のエネルギーがと余計な心配をしてしまった。しかし、これらの死体は菅野橋より下流川に多い。菅野橋際では常時二人から四人の釣人がいる。魚の死体と関係があるのだろうか。

 ところで江戸川では魚類というと外来魚のハクレンも多いが、盛夏と言えばウナギがすぐ頭に浮かぶが、そのウナギも多くいる。かつては行徳橋の上流側でもウナギ漁が数年前まで行われていた。昭和五十年以降は自分で食べる漁中心となったがやがて水上スキーやモーターボートなど若者のレジャーに替わってしまっている。

 しかし、松戸漁業組合の中台弘志さんの話では、江戸川ではアユの定置網漁が中心だがウナギは結構取れるという。しかし、市場は養殖ウナギが中心でなかなか漁で生計をたてるのは難しいとのことである。しかし、最大胴回り二〇センチ、体長八〇センチ、体重二キロ大のウナギも獲れるという。さらに、その倍くらいの大物もいるとの話である。
 都内のウナギの名店では天然ウナギは、利根川下流産のものを使っているようだ。築地市場の話では、天然ウナギは東麻布の野田岩さんや駒形の前川さんなど行っているとの事。七月二十五日が土曜の丑の日。しかし、天然ウナギは蒲焼きで一人前でこれらの名店では五千五百円から六千円、スタミナをつけようとしても、ためらってしまう値段だ。江戸川の主のようなウナギは獲る漁師さんも少なく、悠然と川底で夏を過ごしていられるようだ。
(2001年7月28日)

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30年前の行徳湿地の水禽類再現を思わせる国分川調節池八月三日の朝、国分川調節池で、希少種のセイタカシギが三羽、池内の浅いところで餌を取っている光景を目撃した。セイタカシギは過去にもまれに大柏川や大柏川調節池に単独で採餌に来ることはあったが、三羽も内陸域の池内に姿を巡りあったのは初めてあった。
 宮内庁の新浜鴨場、行徳野鳥観察舎前の鳥獣保護区、行徳橋の可動堰下流の江戸川の水辺には過去から姿をよく見せていた。しかし、現在はそれが減少化し、都内の葛西臨海公園前の干潟や東京湾中央防波堤、富津や木更津側、谷津干潟などでの目撃数や繁殖側が多くなっている。セイタカシギに加え多数のコサギ、チュウサギ、ダイサギ、アオサギ、ゴイサギ、少数だがアオサギ、カラシラサギ、ヨシゴイも七月末から、加えてカルガモやバン、カイツブリからキアシシギ、イソシギ、ウミネコまで見られ、まるで昭和四十年代、まだ水辺の自然が豊かだったころの行徳の光景が再現されているかの光景であった。多数の水禽類の姿が「自然復元」のはっきりした可能性を具現化しているようで感動した。

 いまの時期の国分川調節池の水禽類は行徳鳥獣保護区より多彩なほどである。このような場所は市川にとっても、まさに「宝」といって良いと思う。整備計画でもこれらの空間がより広い状態で残って欲しい。
 ところで大柏川調節池とその北側の大柏川に冬鳥のコガモの雄が一羽七月から姿を見せている。鎌ヶ谷や大町ではサシバの目撃例も寄せられている。
(2001年8月11日)

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オオタカの動きが複雑八月中旬から野鳥の動きで胸の高鳴りを覚えるような目撃や周囲の人たちからの情報が寄せられている。偶然の出合いであっても暑いなか、外に出て良かったという経験がたびたびあった。

 まずオオタカの話題。八月十六日、行徳野鳥観察舎の蓮尾純子さんからの「十四日に松戸市北初富のナシ畑の防鳥網にオオタカの雄の若鳥が一羽からまり保護され、元気に飛べる状態なので十六日に放鳥します」との事であった。松戸市と市川市での境目あたりでの目撃例は、市の自然博物館の学芸員・宮橋美弥子さんから「春から自宅のある松戸市秋山の上空で成鳥の動きを目撃、最近も若鳥を目撃しています」という情報。

 私自身も八月十六日の朝六時三十分、国分川調節池の池面の上空を若鳥一羽が旋回、そして国分の林地方面へ動くのを目撃。さらにその日の夕刻近くの五時過ぎ、北方四丁目の大柏川、大柏橋上空を北西から東南に飛ぶ成鳥に近い個体を目撃。十七日には、その中心域の真間川北方橋西側の八幡五丁目、クロマツの多い住宅地上空で旋回するこれも若鳥を目撃した。

 十九日には、大町公園自然観察園西側の林地の樹冠スレスレを飛ぶ若鳥一羽を目撃。さらに、この日はサシバ六羽も目撃した。オオタカの目撃や情報が短期間に集中するということは市内かその周辺域での繁殖、あるいは低地域での繁殖による若鳥の移動が頻繁にある事のどちらかであろう。大町公園西側の林地では今春にオオタカの繁殖行動が見られたとの情報を自然博物館の学芸員の金子謙一さんから寄せらていた。猛禽類のオオタカはカラス大で、その精悍な姿や飛び方を見ていると胸がドキドキする魅力を持った鳥である。

 ところで十九日に大野町のこざと池でもヨシゴイの繁殖(親二羽と幼鳥四羽)と、北国分の小塚山の林地でササゴイがやはり繁殖しているとの情報が寄せられたが、まだ現地で確認していない。詳しくは次回で報告したい。ただ八月十四日にはこざと池でヨシゴイの成鳥二羽を目撃している。ヨシゴイの繁殖する北池のヒメガマ群が八月に入り、広く刈られているため、昨年同様繁殖するか気になっていたが、幼鳥が見られたとすれば喜ばしいことだ。ササゴイについては三十日に国分川調節池で夜行性なのに昼間から餌を取るササゴイを目撃している。国分川調節池と小塚山はそう遠い距離ではない。

 都市型洪水被害を緩和するための調節池が大小さまざまに各地で少しずつ増加している。少しでも水面が維持されれば、市川でかつての豊富だった水禽類の面影が少しは再現可能であろう。
(2001年8月25日)

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林地で増加中の暖地性の常緑樹今年の夏は関東では猛暑の七月、意外と涼しかった八月という結果になった。東京やその周辺で八月は三十度以下の日が十五日間もあった。そのため体力、気力のなくなった体でも八月になって二、三時間は、市内の各林地や低湿地に足を向ける日が複数とれた。
 現在、市川では環境政策課が中心となり、市内の動植物の実態調査を三年計画で進めている。私も植物調査を分担しており、苦戦はしているがいろいろな変化を数多く知ることが出来ており、得られた結果は三年後にまとめられる予定である。

 しかし、当方の力不足に加えて植生調査の経験者が意外に少なく、予定の林地の調査は進んでいない。それでも林地の下見や実際の毎木調査でいろいろな事実が少しずつ分かってきた。国府台四丁目の雑木林は市内で最も良い状態の林地だが、それでも林床の下刈りが行われなくなって長い時間が経っており、シラカシ、シロダモなどの陰樹の成長が著しい。加えてアオキ、ヤツデ、シュロなどの暖地性の常緑樹の成長が特に目につく。これらは都内目黒の旧名の自然教育園林内も同様である。都内の七ー八月の平均気温がこの二十年間で一・二度上昇していると言われている。またこれらの樹木の実を好み、結果として種子を散布するヒヨドリなど林地性の野鳥の力も大きいと思うが、林地の管理をせずに伸びるにまかせていることも増加の一因である。

 調査をしたなかでそれらが一番顕著だったのが小塚山市民の森で、この林地の南側が特に変化が激しい。ここは見事なアカマツやイヌシデの雑木林だったが五メートル幅で長さ二〇メートル内の林地で五本中四本のアカマツが枯れて伐採された。イヌシデやエゴノキなどの落葉樹は残ってるが、より明るくなった林床は一メートル以上の樹木でシラカシ十一本、シロダモ八本、タブノキ二本、スダジイ二本、モチノキ一本など陰樹の成長が多い。加えてヤツデ五本、シュロ二本、アオキ一本と暖地性の常緑樹が成長して、さらに芽生えでもそれらが非常に多い。そのため林床は暗くマツ林の回復を図って植えられたマツの苗木も照度不足で元気がない。暗くなった林地は隣接した小塚山緑地でも同様である。痴漢が出たとのことで樹木伐採を自主的にやり出す人も出てきた。

 ヤツデ、シュロなど暖地性の常緑樹を含めての陰樹の増加は行徳鳥獣保護区内の遷移中のクロマツを中心とした場所も同様。放置し続ければこれらが増加していく。どうすべきであろうか。
(2001年9月8日)

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農業・漁業・遊船業などに被害が大きかった台風15号九月八日に市内の大柏川に冬鳥のコガモ、タシギが姿を見せ、十七日には大柏調節池や周辺でモズの高鳴きが聞かれた。夏鳥のツバメやコチドリの姿も少なくなり、アブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシの声もかすか。植物でも夏を代表するムクゲの花が少なくなり、代わりにマンジュシャゲの赤い花やオギ、ススキ、カビクサ、チカラシバ、ヨシなど秋を強く意識させる花々が多く見られるようになった。
 ところで台風15号は強い南風と大雨、河川の増水、高い海面の潮位などによる被害が市内のナシ畑を中心とした農業、そして漁業・遊船業の桟橋の破損や釣り船の座礁が数多く、三番瀬に面する高潮・津波堤防のコンクリート護岸の破損など被害が大きかった。

 ナシ畑では新高の収穫直前であったため、強風による落果被害が大きかった。生物調査をしていると北方町四丁目、宮久保、奉免などのナシ農家から二割から五割落果がと落胆の声が多かった。市役所環境政策課の岡崎清孝さんの話では、新高は夏の雨が少なかったため干ばつ被害がすでにあり、雨不足でナシの木自体が水分不足となって実の水分が木にまわり、実がしなびて落果、三〇%の被害が見られていた−という。熱心なナシ農家の方には、台風は仕方がない。落果被害もあるが雨を持ってきてくれる面もある−と冷静に自然を見ようと、心の努力をしている人もいる。

 国土交通省江戸川工事事務所篠崎河口出張所の西山豊和さんの話では、江戸川では台風15号で例年になく増水し、九月十一日午前十一時四十五分から九月十四日の午後一時三十六分まで、行徳可動堰を三門すべて開けたとのことである。
 行徳漁業組合の川口喜正さんの話では、多量の淡水の流入により、十七日になっても海水の塩分濃度が通常の十分の一しかなく、心配しているという。海苔の種つけ時期であるが機械がやられ、作業が進まず七−十日ズレ込んでいるという。
 ハクレンやコイなど江戸川の淡水魚は週末に閉じられた可動堰で川に戻れず、多量死を予想できる事態となっている。
(2001年9月22日)

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実りの秋に新しい世紀に入ると世紀末までの混惑が収まり落ち着くのではと期待していたのだが、思いもしない事態や不安を増す状態になってきて、心が痛む日々が続いている。

 ところで自然の方は、秋の訪れが例年通りのペースで進んでいる。キンモクセイが九月二十九日ころから一斉に咲き、香り、十月七日には一斉に散り、同じころには冬鳥のカモたちも水辺で種類や数が増えている。美しいキセキレイの姿も見れるようになってきた。また秋の渡りの途中の小さいノビタキャビタキ、ムシクイ類も身近で見られるようになってきた。
 実りの秋という形容詞どおり身近にも秋の恵みが数多く見られるようになった。職場の校内でもマキの実が熟してきた。赤や黄色、黒く熟してきた実をスケッチしていると高校生は無関心で通りすぎるが、中学生は関心を示す。食べられるよと水を向けるが、なかなか口に入れる子はいない。以前、自宅隣の神社の境内で遊んでいた子供たちに熟したムクの実を食べて見せたところ、近くにいた若いお母さんに「変なものを食べさせないで下さい」とキツく言われたことを思い出した。

 十月初めに市内宮久保の農家の村越新四郎さん宅を訪れた際、庭には古典派のカキ「禅寺丸」の実が少しずつカキ色化してきていた。川崎市柿生の王禅寺産のカキで、かっては関東地方で広く見られたが、果実屋さんの店頭には姿を見せない。その際、農業後継者の息子さんから野生のヒラタケを見せていただいた。翌日、行きつけの都心のレストランで良いキノコが入りましたよとコウタケを出していた。味も香りも秋を十分に感じさせていただいた。平凡なようだが秋には秋を安心して楽しめる世に戻ってもらいたいと念じている。
 ところで前回、台風15号で開いた江戸川行徳可動堰の閉扉後ハクレンなどの淡水魚の大量死を予想したが、堰を四日間開いたので堰上流に戻れる機会があったためか、今回はそうではなかった。訂正しておきたい。
(2001年10月13日)

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冬鳥のユリカモメが内陸域の水辺に真間川や大柏川に十月九日に冬鳥のユリカモメが姿を見せた。いきなり十二羽を真間川浅間橋から大柏川上浅間橋間で目撃したが、その後も姿が増加している。初めは過度な餌やりをする人も見られずユリカモメ群は自力で一生懸命に餌とりをしていたが、十月二十二日になり大柏川貝之花橋際で多量の餌やりをしている中年女性が、そしてユリカモメは近くの電線上で餌待ちで待機するようになった。歩道には早速に白い糞が点々と、そして別なところで餌やりが始まると群れはそちらに移動する。
 野生への過度な餌やりは控えてもらいたい。自力で餌を取らなくなり、本来は越冬して生活する数が数十倍に集中、他の野鳥の生活を圧迫するようになる。そして自力で採餌するよりも待機するようになり、止まる電線下の歩道や、いつも休息するようになった人家の屋根は糞でいっぱいになる。ユリカモメに比べて数が少ないドバトに餌やりを熱心な人たちが多い真間川浅間橋際では、ドバトの糞で気の毒なくらい屋根になっている人家がある。

 ユリカモメは十月二十日には大野のこざと池や中国分のじゅん菜池にもユリカモメが入ってきている。今後は数が急増するであろう。
 ところで大柏川調節池の掘削工事はいよいよ一年半ぐらいをかけての最終掘削に入った。池内は工事のため水抜きがされているが、その北側の大柏川ではここ一か月通るのが楽しみな日が続いている。キアシシギが秋の渡りの時には複数見られたが現在はクサシギやセイタカシギが姿を見せている。クサシギは二羽、セイタカシギは当初は三羽、現在は二羽、美しい長い赤い脚で餌とりに励んでいる。しかし、ここもユリカモメが急増してきた。江戸川行徳橋下流の干潟や行徳野鳥観察舎前の鳥獣保護区の水辺で見ているような光景が市の内陸側のここ干潟で目撃できる。

 市の柏井調節池では調節池の機能を最大限に発揮させるためとの理由で池の水抜きがされた。水が少しあっても池の計画貯流水量と差がほとんどないのにと思い、かつ水抜きの際に魚を助ける作業をするとの棚にある市の掲示を見るが越冬する希少種の美しいヨシガモをはじめとするカモたちや一年中生活しているバンやカイツブリの事、産卵をしたトンボ数の卵やヤゴたちはと心配していた。市長さんがトンボサミットのあいさつでも淡水の大切さを言ってくれていたのにと思っていたが、幸いにも水は減少しているが残してくれた。浅くなった池には多数のサギ類が採餌に、そして冬鳥のカモたちも入ってきた。完全に水抜きがされなくて良かった。いろいろと配慮してくれた市の担当部局があったのだろう。
(2001年10月27日)

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信じられない光景に直面して市の東寄り、北方三丁目の「子の神緑地保全地区」は子の神神社境内の林地と北側に隣接する栗原忠平さん所有の林地合わせて〇・七ヘクタールが昭和五十六年三月、保存樹林に指定された。栗原さんの林地はアカガシの大木を中心に、スダジイ、ヤブニッケイ、タブノキ、ケヤキ、コナラ、それに植林したスギやモウソウチクを混じえた市川市内でも良い状態の林地の代表といってもよい。宮久保白幡神社の社寺林と並んで市内でも数少ない保全林地である。「この地区は都市の緑地を保全し、良好な都市環境の形成を目的として指定」と明記され、建築物・工作物の新改増築や宅地造成、土砂採取などは知事の許可が必要となっていて、それに木竹の伐採禁止と厳しい条件がかぶせられている。民有地でありながら緑地保全に協力した所有者も立派である。

 市川市では環境政策課を中心に、今年度から市内の生物調査が実施されている。この保全地区も九月二十四日に神社側の調査、そして十月三日、十日に栗原さんの林地の調査。県の自然保護課の熊谷宏尚さんや市内在住の渋谷孝さん、都内からはマルチャックさんたちも応援に来てくれ、調査状況把握のために市の環境政策課の職員も十月三日には一人立ち会ってくれていた。それら一同が信じられないような光景がその日にあった。保存樹林の一部の西側のケヤキ、アカガシなどの大木が帯状にほとんが幹だけの状態や数本の伐採が行われていたからである。市職員の方も、隣接する住民からの苦情があって枝払いを市役所内の別の課が担当したと聞いていましたがと、根際近くで伐採されている大木の切り株に言葉もない様子であった。

 苦情に対して適度な枝払いは妥当である。しかし、伐採となると話は違う。それらの木が直径四〇センチ、五〇センチになるのに長い時間がかかる。所有者も大切に残してきた木である。木も生き物であり、慎重に対応してほしかった。
(2001年11月10日)

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池の昼と夜の違い朝の最低気温八度と寒気が強くなってくるとサクラ、ケヤキ、コナラ、クヌギなどの紅、黄葉が美しくなってきた。全域狩猟禁止区域である市内は、池や川の冬鳥のカモ類も多くなってきた。大野町のグリーンハイツ、パークハイツ北側の雨水調節池であるこざと北、南池もカモ類に加え、昼間は冬鳥のユリカモメが訪れる人たちの給餌も多いために急増している。

 十一月十九日に昼間と夕闇の五時すぎに池を観察。夕刻に足を運んだのはアブラコウモリの越冬日を確認したいためであった。数は少なくなったが夕刻の池面を三匹がまだ飛び回っていた。そして、水禽類はハシビロガモ、ホシハジロ、キンクロハジロなどは昼間と夜に大差はなかったが、カルガモやコガモが多くなり、夕刻から活動が盛んになるゴイサギとアオサギがやはり多くいた。特にゴイサギが多く、「夜鴉」の別名のようにうるさい声をしきりに響かせながら北池の東側のアシやヒメガマの茂みからの出入りが頻繁であった。カルガモ、コガモ、バンも昼間と数は変わりないが、カルガモは周辺域から多数が来ていることがわかった。

 カモの視力は夜は鳥目でなく人間並みに薄明かりがあれば行動できる。池面は街灯やグリーンハイツやパークハイツの灯りでけっこう明るい。ユリカモメのように給餌待ちではなく、一生懸命食べるため働いている光景が夕闇のなかでくりひろげられている。特にアオサギは二〇 大の魚を捕らえ、大物過ぎて飲み込むのに四苦八苦している光景にも出会えた。
 昼と夜で一変する鳥たちの様相は住宅地隣接する池だけにこざと北、南池は観察に便利な池である。アシやヒメガマの植生を嫌う人もいる。しかし、それらが残っている不思議な池だ。住宅地に囲まれた池だがヨシゴイやバン・カイツブリの繁殖池であり、市川の水禽類の生活の拠点の一つとなってきている。
(2001年11月24日)

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国分川調節池づくりいよいよ具体化国分川と春木川の間で県真間川改修事務所を中心に進められていた二四ヘクタールの都市型洪水に対応する調節池づくりが歩みを早めてきた。用地買収も約七〇%になり上中下の三池のうち、すでに上池の一部は掘削され、浅い池状が形成されている。これらの池の利用を考える会議が県の真間川改修事務所、県都市河川課、そして市川市水と緑の計画課、さらに環境部、教育委員会、学識経験者も参加しての国分川調節池整備計画検討準備会が今年の七月以来開かれ、さらに十月からは整備検討委員会となり、十一月二十九日には地元の人たちを中心に「国分川調節池を考える会」も開かれ、今後来年三月までの間に複数回、池づくりの地元案が検討されることになっている。調節池づくりは用地買収が済み次第、本格的着工への具体的なスタートである。

 これらの会議に参加してみたが「国分川調節池を考える会」などでの話し合いの中で調節池の必要性の認識度、池の形状についての解決、スポーツ施設のあり方「自然」に対する認識の差などに大変な意見の差が地元の人たちの間でかなりあることが感じられた。特に「自然」に関しての認識の差は大きく、それは地元の人たちが意外と用地買収や工事が進んでいる池に足を向けることが少ないことに起因していることにもよるようだ。
 急きょ、十二月十五日土曜日午前十時から、現在の池を形成している西側の国分川関下橋より池内を観察する会が開かれることになった。現在の池は一部が暫定的に低地化されていたものだが一九九九年に入ってから掘削され、三〇センチ程度の水深の池状化したものである。周辺の水辺の植生や堤、埋め立て地の植物が増加した場所で、わずか二年半の間に七月、八月はサギ類の市内で最大の生息地となり、秋から春にかけては越冬カモ類の数が多い場所にもなる。オオタカ、ハヤブサ、チョウゲンボウなど猛禽類も姿を見せ、今夏から秋にかけては希少種のサギ類であるカラシラサギ、ヨシゴイ、ササゴイなども姿を見せていた。

 市内でも水禽類の有数の生息地となった調節池は市川市にとっての重要な「自然」ポイントとなってきている。
(2001年12月8日)

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今冬も珍客四種の紹介昨年十一月二十五日の当欄で「珍鳥四種が姿を見せる」として、ヘラサギ、コハクチョウ、ヨシガモ、アメリカヒドリを紹介した。寒気の強くなるこの時期は、思いもしない野鳥が姿を見せることがよくある。今冬も別な種類の目撃があった。
 国分川調節池に十二月初めからミコアイサの雌が一羽姿を見せている−と県立国分高の越川重治教諭から連絡をいただいた。十二月十五日には雌が三羽と増加。この日、市の水と緑の計画課と県真間川改修事務所主催の調節池予定地の現地見学会があったが、暫定的に一部掘削されている池面でしきりに潜水しながら採餌している三羽コガモやオナガガモ、ハイビロガモ、カルガモたちに混じって観察された。ミコアイサは市内では江戸川河口や行徳鳥獣保護区などに少数姿を見せる冬鳥の海ガモで、雄は白に目のまわりの黒い色でパンダガモと愛称されている人気種である。雌は頭上から後頭にかけての茶色と背の濃い灰色の体色である。川口、海面部の入り江などに姿を見せるカモが内陸の掘削池に姿を見せるのは珍しい。

 次はオオハクチョウの若い固体一羽で、十二月十日前後あたりから、南大野のグリーンハイツ、パークハイツ北側の雨水の調節池あるこざと北、南池に姿を見せている。若鳥はまだ全身が灰色で人になれている。どこから来たのであろうか。茨城県古徳沼に約六十羽ほど昨冬にも飛来しているが、そのなかの一羽なのだろうか。羽ばたきしたり、少し飛んだりしており、けがの様子もない。オオハクチョウは地元の水巻令子さんから行徳野鳥観察舎の蓮尾嘉彪さんに連絡、そして私の方に情報が回ってきた。コハクチョウの方は昨年も三羽行徳の保護区に姿を見せている。
 そして珍客の部数には入れたくないのが冬の貴婦人といわれるタゲリである。かつて北方町四丁目や大野の刈田に関東で最大の群れが毎年越冬していたが、最近は湿田の激減とともに減少し、今冬は姿をなかなか見せずに気になっていた。しかし市内の斉藤謙治さんと松戸市の瀬下玲子さんから市川北高校周辺の刈田と畑地に十二月十日あたりから十一羽来ているとの情報。これ以上減少せず、二年後には整備される大柏川調節池などの湿地で定着してほしい。

 最後は十一月中旬以降真間川八幡橋周辺で姿を見せていた南米産のコウカンチョウ。白い体と頭の赤が特徴で飼鳥の逸出と思われる。カーディナルの名で知られており、堤の水辺で美しい姿と声を楽しませてくれたが、その後姿を消している。
(2001年12月22日)

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今年も身近な自然にやさしい目を昨年末、若い人たちが市内の複数地で自然観察や調査に熱心に取り組んでいるのを目撃。希望や期待感のふくらむ気持ちいっぱいで年を越した。
 国分川調節池では高校生が野鳥の観察や調査に取り組んでいる姿をしばしば目撃できる。また、南大野のこざと北・南池でオオハクチョウの調査に行った際、若い両親が三人の子供たちにオオハクチョウや冬鳥のカモたちを観察させ、スケッチをさせている光景に出合えた。うれしい光景だった。年配者や親子連れでの野鳥に多量の餌やりの光景ばかりを見てきた目からすると、きちんとした観察の基本を踏んでいる姿勢は非常に良いことだ。

 若いころ、イギリスのロンドン市内のセントジェームス公園やハイドパークのサンクチュアリーではこのような親子連れの観察の光景は数多く見てきた。自然との接し方の伝承を親から子にさりげなくしている姿を市川市内では目にする機会は少なく、餌やりばかりでがっかりしていた。溜り水の池で多量の餌やりばかりしていては、かなりの量が食べられず沈み、腐敗し、池の水質は悪くなる一方である。自力で餌をとらず給餌待ちの多数の鳥たちの糞で池周辺は汚れている。それが池の生き物の生活を駄目にして、周辺の人家にかける悪臭などの迷惑も数多い。餌やり以外に、見つめ、調べる自然とのつきあいをさせている両親は素晴らしい。両親も観察を続けていたがこのような家族がもっと増えて欲しい。

 ところで年末の当欄で冬の貴婦人のタゲリの飛来にふれたが、その後は越冬でそれだけこの数を維持できなかったのか分散化をしてきたようだ。十二月十八日には北方町四丁目の大柏川調節池の掘削中の池の湿地に二羽餌とりに、国分川調節池の南側の金網で囲まれ、草刈りされた用地内で一羽目撃できた。
 大町公園自然観察園の林地では林の枝に止まるオオタカの姿や林地スレスレに飛ぶ姿が短時間に三回も見られた。さらに林地ではエナガ、マヒワ、シメ、アカゲラ、コゲラ、メジロなど、林縁ではルリビタキやシジュウカラなど多彩である。
 北方四丁目の市民プール内では今冬もマガモの雄・雌の姿が多く見られる。市内では今冬もマガモの最大数の越冬地となっている。

 行徳の鳥獣保護区内も例年どおりの多彩な野鳥が身近に観察できる。休日には観察会で保護区内に入れる(日時は野鳥観察舎に問い合わせを)。このように市内にはいろいろと身近で観察できる場所がいくつもある。今年もぜひ各地に足を向けて、町のなかの自然に、やさしい目を向けて欲しい。
(2002年1月3日)

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2002年度市川市内ガン・カモ調査結果十二日から十五日にかけて、今年度の市内の行徳鳥獣保護区や東京湾奥の海面域を除く江戸川、市内中央から北地域の池などのカモを中心に個体数調査を実施した。
 環境省による三十三回目の全国一斉の水禽類の調査で、私の担当区域結果を報告しておきたい。体調不調で歩行がきつくやや苦戦をしたが、一番の苦労は中国分のじゅん菜池調査であった。多数の餌やり者がおり(一時間の間に三十九人も!)そのたびにカモ類が大混乱。二回数え直したが正確性に自信が持てないほどであった。五分間、給餌を待ってと頼んでも無視されてしまうことや、ある女性は一人でパンの包を六袋を与えたりで度の過ぎる餌やりが目についた。その結果、市内の中央から北地域の地での越冬カモ類の約六二%の数がじゅん菜池に集中してしまっている。

 今年度特筆することはオオハクチョウの若鳥二羽がこざと北、南池に、さらにミコアイサの雌四羽が国分川調節池に、そして大柏川調節池の掘削が最終段階の年度になり掘削工事がピークで水抜きしており、その数のほとんどが市民プールと周辺域での学校プールに姿を見せている。
 ところでカモ類ではないが、水禽類のオオバンが江戸川行徳橋上流で十八羽、柳原水門周辺で七羽、国分川調節池と柏井調節池で一羽ずつと生息域が少なくなってきていること。やはり水禽類のうちで湿地性の冬鳥のタグリが市の保健医療センターと市川北高校周辺で四羽、大柏川調節池の水抜きをした池で十六羽、国分川調節池周辺で一羽が記録できたこと。さらに、やはり湿地性のイカルチドリやクサシギが大野町や北方四丁目の大柏川で少数いることなどである。ぜひ、皆さんも身近な場所で足を向けていただきたい。
(2002年1月26日)

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ichiyomi@jona.or.jp 市川よみうり 

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