市川よみうり

今週の人

人に恵まれて周りの人に支えられた34年

市川市消防局長に就任した
鈴木 定廣さん

     昭和22年生まれの59歳。昭和42年に、生まれ育った上総亀山から行徳に移り住んだ。当時の行徳は、お金のないときに近所で食事をもらうなど、人間味がとても豊かな街。「局長に任命されたのも周りの人に支えられたから。人には恵まれた。それは間違いない」。
 消防官になったのは25歳のとき。その理由は、「『ありがとう』と言われる仕事に就きたい」という思いだった。いまでも、「心と心のつながり」を最も重視。「真心を持ち、相手の身になって対応することが一番大事」と、市民の期待と信頼に応えるよう心がけている。
 消防での34年間は、主に危険物施設の許認可や消防用設備の検査などの予防業務に携わってきた。「こうしておけばよかった」と思うような些細な失敗は毎日してきたが、「それも勉強のうち」。なかなか失敗が許されない時代になったが、「若い人も許される失敗をして一人前になる」と、職員の成長を見守っている。
 昨年6月に住宅火災警報器の設置を義務づけるよう、火災予防条例が改正され、現在、設置促進に向けた活動を強化している。「市民の生命・身体・財産を守るのが消防の最大の使命。人材の育成と知識技術の向上を図り、高度な消防サービスを提供できるように頑張っていきたい」。
(2007年6月1日)
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今週の人

何も知らなかった自分が恥ずかしかった

戦争の遺物に光を当てた写真集『パラオ』を出版
田中 正文さん

     海中の美しさを紹介するため、20年ほど前に著述家から写真家に転身。パラオ近海の海にも何度も潜ってきた。だが5年前、同国大統領夫妻とのダイビングで目にしたのは、太平洋戦争時の旧日本軍の戦艦や航空機が海底に横たわる光景。「日本人としても、カメラマンとしても知らなかった自分が恥ずかしかった」と大きな衝撃を受けた。
 「俺たちはここにいる」という、英霊たちの声に突き動かされて撮影を始めたが、当初はレンズが真っ二つに割れたり、原因不明の高熱で入院したりと、警告を受けるような出来事が多発。現地の人からも「日本兵が怒っているからやめなさい」と忠告された。だが、「やめなさいと言われているのではなく、本気でやる気があるのか試されている」というのが、自問自答を繰り返して得た答え。撮影の後半は、驚くほど順調に進んだ。
 5年間に及ぶ作業を通じ、写真家の仕事は「自分が美しいと思う被写体を選んで撮るのではなく、本当は被写体が語りかけるものを、写真というメディアに翻訳すること」だと気付いた。現在47歳。これからも太平洋戦争の遺物を追いかけるとともに、絶滅したニホンアシカや三番瀬の生き物など、“あまり人に見られないもの”に光を当てて行く。
(2007年6月8日)
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今週の人

相談から改修まで“血の通った支援”を

NPO・安全で安心なまちをつくる会理事長
益子 安正さん

    高校から建築を学び、大学卒業後、市川市職員に。南行徳中やクリーンセンターの建設に携わるなど、「建物ができ、この世に残っていく楽しみ」を味わった。
 だが、平成16年度に異動した建築指導課で「耐震化」の問題に直面。NPOや学校の教師らが主催する耐震フォーラムなどのイベントで勉強を重ねるうちに、「私も何かやりたい」と心に火が着いた。
 「60歳になってからではできない。体が動くうちに、31年間お世話になった市川市に恩返しがしたい」と53歳の今年、退職してNPOを設立。家族からも「やりたいことがあるなら、体の動くいまのうちにやったほうがいい」と後押しを受けた。
 公平性の面から業者を紹介できない行政に対し、「設計業者や施工業者などを会員にすることで、相談から改修までトータルにサポートできる」ことがNPOの強み。家具の配置や手すりの高さなどをそれぞれの家のニーズに合わせるなど、“血の通った支援”を心がけていく。
 毎年、夏休みには愛犬と妻と一緒にキャンピングカーで気ままな旅に出かける。お気に入りの場所は、「空が澄んでいて星がキレイ」という美ケ原高原。「いつかはキャンピングカーで日本一周」。そんな夢を思い描く。
(2007年6月15日)
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今週の人

多くの課題に検討よりも早い取り組みを

浦安市初の女性部長
大塚 久美子さん

「“産んでよかった、生まれてよかった浦安市”にしたい」―。
 少子化や虐待、核家族、子育てに煮詰まりやすい専業主婦、障害など、子供の置かれている環境に課題は多い。「ゆっくりと検討している時じゃない。すぐに取り組まなければ」と、これまで分散していた零歳から18歳までの子供を支える担当をまとめた「こども部」の初代部長に就任。子供を総合的に支援できるからこそ、「広い視野で子供や親を見つめながら、細かい気配りをしたい」。そのためには、ネットやデータではなく現場に出向き、子供や親たちが何を求めているのかを知り、職員が課題や情報を共有化することが必要―と、とにかく子供のために走り、指揮を執る。子育てを担っているのが母親だからこそ、子育て経験のある女性職員の経験が生きる。「子どもの悩み、自分の生き方、親としての自己実現など、いつでも気軽にこども部に相談に来てほしい」。
 発展する街の熱意にあふれる浦安市に、大卒で奉職した54歳。最初の上司の現場主義を受け継ぎ、広報や総務(市史編さん)などで多くの市民との触れ合いを軸にした業務に携わった。
 課題に対して真剣だからこそ、まずは寄せ集め所帯でも発足したこども部。「子供が育つよりよい環境って、浦安で育った子供や子育てをした親が、いい思い出をもてることでしょ」。目的地のイメージははっきりしている。
(2007年6月22日)
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