市川よみうり

今週の人

子供たちの笑顔がうれしい一番の思い出

地域の小学生に乗船体験の機会を提供する船宿の女将
伊藤 千鶴子さん

  

 20年ほど前、漁師をしていた夫と江戸川放水路に船宿を開業した。だが5年前、台風で増水した川に夫が転落。地元を上げて捜索にあたったが、そのまま行方不明になった。夫亡きあとは、女社長として店を切り盛りする生活に一変した。

 やっと仕事がひと段落した昨年春、妙典小に乗船体験を申し出た。「夫の捜索に協力してくれた地元の人々や、日ごろ商売をさせてもらっている地域の人々へ恩返しをしたい」というのがその理由。何よりも、子供へのボランティアは夫の遺志でもあった。

 そして昨年11月、自社の船2隻を使って念願の乗船体験を実施。船に乗り込み大喜びする子供たちの笑顔を見て、「何よりもうれしかった。昨年で一番の思い出」と振り返る。だが、子供たちには心に刻んでほしいことがあるという。「海には豊さもあるが、怖さがあることも知ってほしい。海を甘く見ないで」。

 「仕事が健康の秘訣かな」という61歳。この地で一番の船宿になるのがいまの夢で、毎年正月には趣味の着物で客を出迎える。

 「次の乗船体験は潮干狩りなどいろいろなことをやりたい。楽しみです」。子供たちからの礼状をうれしそうに抱え、川面を見ながらほほ笑んだ。


(2009年2月7日)
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今週の人

感謝状受賞はみんなで活動してきた記念

知事感謝状を受けた民間市民農園利用者の会「柏井きらく会」代表
赤星 辰昭 さん

  園主はナシやトマトなどを栽培する農家で忙しい。みんなで利用させてもらうために、自然発生的に発足した利用者の会。残さのたい肥化や供用部の維持管理、草取りや花植え、イベントなどの担当を決めて農園の運営を続けてきた。初代代表になって約5年。会員56人の9割以上が年上の56歳。「みんなの意見をきちんと聞き、オープンにするよう務めてきた。無関心になることが一番よくないですから」と、会社勤めの経験を生かし、全員参加を大切にしてきた。

 「野菜作りは土作りが大事」と、深く起こして空気やたい肥を入れ豊かにした土から、さまざまな野菜を作る。地物はやっぱり甘さが違う―とは友人や同僚の言葉。ただ、野菜作りの魅力は“味”よりも「育っていく過程が見られる」こと。タネから育っていく姿を眺めているだけで“癒し”になる。「台風や寒さで野菜は大丈夫か―と不安になります」と笑う。

 「八割方は一緒かな」。趣味の野菜作りとテニスを夫人とともに楽しむ。「知らない人と出会い、コミュニケーションを交わす。転勤してきた市川でもたくさんの人と出会い、輪が広がった」。感謝状の受賞は「みんなで活動してきた記念」。転勤で住まいはすでに宮崎市。新たな土地でも、家の次に畑探し。


(2009年2月14日)
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今週の人

地域との交流を大切に“めっちゃ輝く!”

子育てサークル「EXTRAL SHINE」代表
関口 歩惟子さん

 おしゃれも家事も子育ても頑張り“めっちゃ輝く!”が名前の由来。余裕の少ない子育て中でも自分の気持ちも大切―とおしゃれを「あきらめない」。若さや容姿からなかなか周囲に溶け込めなかったり、公共施設の利用申請用紙をもらうだけで時間がかかったりしたこともあるが「若いからできない―と思われるのはイヤ」と、嫁ぎ、引っ越してきた地域で10代、20代の若いママが助け合う。「こんなに同じ年代のママがそばにいた。30代のママに『自分の時にも同じようなサークルがあれば』と言われ、役に立ててるのかなと思い、うれしかった」。

 ママがおしゃべりするだけでなく、会員の得意なことや資格を生かして“子供を中心に据えた親子の活動”をモットーに手作りの活動に取り組む。同じ年代の“友達”だからこそ、さまざまなアイデアが生まれ、楽しく過ごせる。

 幼稚園教諭と保育士の資格をもち、2歳の子供を育てる24歳。イベントの企画や準備などで忙しいが、「家事も子育てもできて当たり前といわれるなかで、とてもやりがいがあります」。活動を始めて半年以上が過ぎ、地域の協力者も現れてきた。「地域の人との交流を大切にしていきたい」。ママや子供、地域の人がともに過ごしやすい地域を思い描く。


(2009年2月21日)
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今週の人

目指すは「お互いさま!!」の地域づくり

伝統技術で行徳の家を再現し市川景観賞を受賞
大屋 好成さん

 金属を使わず木材を組んで家を建てる日本の伝統木構造を基本に、圧迫感がないよう数寄屋造りを取り入れながら最新の建築技術を生かし、「色気のある」独特の家を建てる大工の棟梁。「施主にとって大事な家が、二十年から三十年で壊れてしまうのはおかしい。世代が替わっても住み続けたいと思う家を建てたい」。

 親族に国の有形文化財に指定された家を建てた棟梁もいる三代目の五十五歳。若いころは最新工法の家造りにも挑戦したが、その後、建てた家はカビだらけ。「俺がこんな家を建ててしまったのか―とッとした。流行を追ってばかりではつぶされる」。伝統木構造も「こだわるのはいいが、寒くて住めない。伝統を追求してばかりではダメ」。これらの経験を糧に、最新技術と独自のアイデアを盛り込んで磨きのかかった家を建てる。

 数少ない休みは、釣りと視察を兼ねた家族旅行。古い家には「そのまちに伝わる特色や暮らしぶりが現れる。家は個人の財産で、内側は住んでいる人のものだが、外観はみんなのもの。まちに安らぎと、まちを愛する気持ちを生む」。「大工は組み立て屋ではない」と、墨付けやカンナがけなど大工の基本も後世にしっかりと伝える。一男一女の子供が木くずを浴びながら、その背中を追う。

(2009年2月28日)
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