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春の市川を一つに オープンガーデン
庭主夫妻の「美」を求める旅
訪れる人思い 毎年工夫凝らす

花に囲まれて幸せそうな皆川さん夫妻。小径を進むと、大きな庭は花の広場のよう

エントランス付近には、見頃の花を紹介するパネルが飾られている

水音の聞こえるシェードガーデンも、夫妻のお気に入りだ
5月の市川市内を彩った「いちかわオープンガーデン」。鬼越のお宅を訪ねようと、目印の神社の脇を歩いていくと、視界いっぱいに無数の花が飛び込んできた。庭の小径の先では、スマホとつないだ小型スピーカーからクラッシックピアノの音楽が流れ、花に囲まれて幸せそうな庭主さん夫妻が顔を覗かせた。
■皆川さん夫妻
市川市で、個人宅の庭の開放が始まったのは、東日本大震災の発生した2011(平成23)年秋。当初は春と秋に開いていたが、今は春のみで、市と「ガーデニングシティいちかわクラブ(GIC)」が共催している。
庭主さんも見る人も楽しく、市内を一つにするイベントで、今年は個人宅14軒と、集合住宅1カ所が参加した。
訪れたのは、12年春から毎年参加している皆川淳一さん(74)、重子さん(72)宅。淳一さんは、GICの副会長でもある。
皆川家は江戸時代、この地でこんにゃく玉や梨などを販売していたといい、現在7代目。重子さんは都内のメーカーで淳一さんと職場結婚し、市川市に来た。
親族の住宅と、以前経営していたアパートのある約150坪の広い敷地は、花の広場のよう。お孫さんの名前からとったという、「花咲ガーデン」と書かれた木製プレートのかかるゲートをくぐると、小径に沿って宿根草の「ボーダーガーデン」が続き、裏手には、池の水音が聞こえる「シェードガーデン」も。
エントランス付近には、見頃の花を紹介する写真や、種の袋が飾られていた。
■庭で弾む会話
庭主さんとの会話も、オープンガーデンの魅力。バラに囲まれながら、皆川さん夫妻の思い出話や、庭づくりへの情熱などをゆっくりと聞くことができた。
ここでの出会いがきっかけで、庭主になった人もいる。
皆川さん夫妻は、若い頃は山歩きが趣味で、子供が生まれてからも、百名山の頂上を目指し、家族で山に登った。
今では、オープンガーデンが終わったこの時期になると、2人で北海道のガーデンツアーに参加したり、信州を訪れたりして、ガーデン巡りを楽しんでいる。
宿根草も、2人で旅行した際に気に入り、花を咲かせて2年目。庭のテーマも、昨年からは、「ペレニアル(宿根草)ガーデン」に変えている。
■美術館を巡る
皆川さん宅の庭のバラは、鉢植えが中心だ。「地植えの方が花の数も3倍ほどになる」が、鉢植えは、レイアウトして自由に庭をつくり変えることができる。
独学で本を読んだり、自分に合う育て方だと感じた専門家の講演に、足を運んだりしている。
筆者も、水やりの難しさや、陽光は午前中に一定時間あれば十分で、夕日は適さないといった話を聞いているうちに、自分でも育てたくなってきた。
淳一さんは、来年もきれいな花を咲かせられるかというプレッシャーの一方で、「『庭にいると癒される』とか、その年の花や庭づくりの工夫に気づいてもらえた時が、一番うれしい」と話す。
今年はこれから、夫妻で美術館巡りをしたいという。来年は、美術館からヒントを得た庭を見られるかもしれない。
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