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「梨づくりの善六さん」舞台に
市川の民話のファンタジー
語り、ダンス、オペラ、人形…

(後列左から時計回りに)今井さん、上田遥さん、上田はる美さん、湯浅さん、MATCHAさん

練習では繰り返しタイミングを合わせた
市川民話の会の「市川のむかし話」にも収録されている『梨づくりの善六さん』が登場する語りとダンス、オペラ、人形のファンタジー劇場「梨の善六と純白の花」が10日、メディアパーク市川のベルホールで公開される。舞台演出、振付家として知られる上田遥さん(67)が台本、構成、演出を手がけ、市川民話の会会長の湯浅止子さん(77)が語りで出演する。稽古場の練習風景も、ブレイキンに語り、楽器と、まさにファンタジー。本番では、どんな善六さんに会えるのだろうか―。
上田さんが、市川市を拠点に立ち上げた「ICHIKAWA黒松カンパニー」の公演で、主人公の「善六」をダンサーのMATCHAさんが演じ、「語り」を湯浅さんが担当。「純白の花」で舞踊家の上田はる美さん、「歌い人」で声楽家の小田修一さん、「梨娘」でダンサーのMASAMIさん、「パーカッション」で今井雅子さんが出演する。
湯浅さんは、語りの中で、10歳の女の子、20歳の女性、書店のおばさん、88歳の老婆を演じ分ける。今井さんは、地元市川で、手児奈太鼓のメンバーとしても活躍している。
フラメンコやモダンダンス、ジャズダンス、日舞もこなすはる美さんは、遥さんの妻で、市川にゆかりがある。
遥さんは、真間の手児奈に代表される市川の豊かな歴史、伝説、昔話に魅せられ、市川をテーマにした作品づくりに思いをはせる中で、湯浅さんの語りを聞く機会があった。
素朴ながら心に届く、湯浅さんの語りを軸に舞台がつくれないか考え、題材も、市川民話の会編集・発行の「市川のむかし話」から選んだ。
『梨づくりの善六さん』の物語は江戸時代、祖父の代からの借金を抱え、八幡で苦しい生活をしていた善六さんが主人公。
善六さんが、米や麦づくりに向いていなかった「八幡の土地でつくれる産物はねえべか」と考えていた時、八幡さま(葛飾八幡宮)の「ぼろ市」で、一冊の中国の詩集に出合う。そこには、梨の白い花が雪のように咲く様子を詠んだ詩が、掲載されていた。
梨づくりを夢見た善六さんはその後、美濃と尾張の境の生産地から、苦労して梨の小枝を枯らさないように持ち帰り、何年かして八幡さまの境内で梨づくりに成功し、市川の梨を広めたという話だ。葛飾八幡宮の境内には今も、善六さんの記念碑がある。
6月に訪れた稽古場では、善六役のMATHAさんのスピード感のあるダンスに、湯浅さんの語り、今井さんのパーカッションを合わせる練習が繰り返されていた。
ちょうど、市川の梨は本格的なシーズンに入る。完成したファンタジーな舞台が、楽しみだ。
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