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市川発信の永井荷風文学賞発表 市川に足跡の荷風論にも意欲 「紙幅と質が比例の大作」評価


第1回永井荷風文学賞の発表会見を終えた(左から)壮一郎さん、田中市長、受賞者の田中さん、荻野さん

菅野の自宅前でポーズをとる永井荷風(孫の永井壮一郎さん提供、一部トリミング)

田中純さんの評伝「磯崎新論」

 市川市と三田文学会が創設し、地方から発信される文学賞として注目される「第1回永井荷風文学賞」の受賞作が決定し、市川市役所で発表会見が開かれた。受賞したのは、芸術論や思想史の研究者で東京大学名誉教授、田中純さん(65)の評伝「磯崎新論(シン・イソザキろん)」(講談社)。荷風同様、市川に縁がある田中さんは「磯崎論の延長で荷風の跡をたどるため、市川の都市を見て回りたい」と、意欲を示した。

 ■選考模様を掲載

 「磯崎新論」は、ポストモダンの建築家で著述家、思想家でもある磯崎新氏(1931~2022)のキャリアを論じた作品。

 11日の会見には、荷風の孫の壮一郎さん、三田文学会理事長の荻野アンナ同賞実行委員会副委員長も出席した。

 2作品が選ばれた新人賞と合わせ、11月24日に、市川の山崎クリエイションセンターで授賞式を予定。選考模様は、9月29日発売の「三田文学」(夏秋合併号)に掲載される。

 永井荷風(1879~1959)は、明治から昭和にかけて、小説、随筆、評論、演劇、詩など多分野で活躍した文豪。明治末期には、慶応大学で三田文学を創刊し、初代編集主幹を務めた。

 戦後に都内から市川市菅野に転居し、名誉市民にも選ばれている。今も外観が残る京成八幡駅前の「大黒家」のカツ丼を愛したエピソードは、有名だ。

 文学賞は、市制施行90周年事業として、荷風ゆかりの市川市と、三田文学が昨年11月に創設し、今年6月の候補5作品決定に続き、今夏、慶応大学で最終選考が行われた。

 ■「文人」として

 荻野さんは、受賞理由について、「ひと言で言えば、質と量が比例するこの(書籍の)厚さ。革新的な建築家であると同時に膨大な著作を残し、『文人』たり得ることを望んでいた磯崎氏に徹底的に寄り添う姿勢を見せ、それを論じることの新しさ、一人の人物を厚い紙幅で論じ尽くす熱意の大きさ、磯崎氏の残したものを網羅した緻密な文章が高い評価を得た」と語った。

 さらに、「出版文化を地方から盛り上げていく、機運の中にある。出版社がただ、新規の賞をつくるのではない新しさは、市川市との協力で生まれた。地方文化の発展、中央の出版文化のためにも、育てていかなければいけない大事な賞」とした。  

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