頼もしかった指令センターと救急隊
10市で運用 市川救急は13台フル稼働
異変には「躊躇せず119番を」
迷ったら「#7119」

松戸市中央消防署の建物内に設置され、近隣10市で運用している「ちば北西部消防指令センター」

10市の救急車の出動状況が一覧できるモニター。隣接市の応援要請にも対応できる
住宅地の行き止まりの道に、救急車がバックで入ってきて、玄関から一番乗り込みやすい位置に、ぴたりと停まっていた。玄関の鍵を開け、救急隊の到着を待っていた筆者は、隊員に抱えられてストレッチャーに横になり、酸素マスクを装着。途切れがちな道路を走る感覚と、車外のサイレン音に続き、「病院に着きましたよ」という、隊員の頼もしい声が聞こえてきた。
■迷った119番
インフルエンザは陰性だったものの、雪の衆院選投開票日の後から、発熱が続いていた。いつもと違う苦しさだが、熱くらいで119番していいものか―。
かかりつけ医が昼の休診時間で、迷っていたら突然、体が大きく震え出し、スマホの119すらうまく押せなくなっていた。何度か失敗しながらつながり、とっさにスピーカーボタンを押した。
呼吸が激しくなり、うまく話せない。どうにか住所を伝えると、「向かいの家は○○さんですね、右隣は…左隣は…」。短い返事だけで場所が特定できるよう、質問してくれた。
救急隊が向かっていること、玄関の鍵を開けて待つようにとの言葉に、もう大丈夫、すぐに来てくれると、安堵した。消防指令センターと、到着した救急隊員とのやり取りが、命綱になった。
救急搬送への申し訳ない気持ちは、総合病院の救急外来の医師から、明確に否定された。感染症で、血液中に細菌が入り込んでおり、「119番は正解です。家でがまんしていたら、危険な状態になっていたかもしれません」。
■消防指令センター
退院後、消防指令センターと、救急隊の日頃の苦労についての取材が、実現した。
市川市は、松戸市中央消防署の建物内にある近隣10市で構成する「ちば北西部消防指令センター」で、119番通報を受けている。
66人の職員がいて、うち60人が3つのグループに分かれ、24時間の当直勤務を交代で行っている。市の規模に応じ、市川と松戸は13人ずつ派遣、浦安は4人。
案内してくれたのは、市川市消防局から派遣されている副センター長の大野智さん。指令センター内は、想像よりも静かで、職員が冷静に電話対応し、自席のディスプレイの住宅地図で出動先を確認しながら、病状などを書き込んでいく。
アンテナのようなランプの赤が消防、白が救急。壁のモニターでは、10市の救急車の出動状況が一覧できる。同センターでの119番の受信は、2025年は1日平均530件で、そのほとんどが、救急案件だという。
市川市では常時、13台の救急車が稼働している。6日午前に訪れた際、モニターには、整備中(黄)を除く13台のうち、出動中(赤=現着、収容、病着)が5台、業務中(黄緑)が1台、署や出張所にいる車両(白)が7台で、「(他市への)応援不可」と表示されていた。
各市の職員は当然、他市の119番も受信するが、通報内容を的確に把握し、救急隊に共有していく。
■署に戻れない時も
市川市内には、東西南北4消防署と、中山、高谷(東署)、国府台、大洲(西署)、行徳、広尾(南署)、曽谷(北署)の7出張所がある。救急車が2台あるのは2署だけで、ほかは1台のみ。
これを114人の救急隊員が2班に分かれ、24時間勤務と休日を組み合わせながら運用している。救急車1台につき、隊長、機関員(運転手)と、もう1人の3人が乗り込む。約70人の救急救命士の資格を持った隊員もいる。
50万人都市で13台は、国の消防力の整備指針を満たしている。だが、25年の救急出動件数は、2万7152件。単純計算で、1日の出動は74件にのぼる。
市川市消防局で、救急隊歴20年のベテラン、中村真也さんと、6年の冨沢元樹さんによれば、署内ではふだん、人形での静脈確保、点滴など手技の訓練や、隊員同士の連携の確認などを行っている。
ただ、実際には、署から出動、病院を探して搬送を終え、署に戻る前に次の出動がかかるケースも少なくない。このため、病院で出動態勢を整えたまま、家での手づくりや病院のコンビニ弁当で、食事をすませることもある。
こうした過酷な勤務にも関わらず、救急隊員は常に、市川市特有の狭い道や曲がり角、時間帯による道路の混み方など、署や出張所の管内、市内の状況を常に把握する努力をしている。
救急車がすぐに向かえず、ポンプ車が先行するケースもある。最寄りの署や出張所に救急車がいて、近くの総合病院に受け入れが決まるのは、「極めて運がいい」(吉村和弘消防局長)という。
■必要な人のために
「通院するのにタクシーが来ない」といった119番や、明らかに軽症で緊急性がない不適正利用は、本当に必要な人の搬送を遅らせる。一方で、高齢者などが遠慮し、危険な状態になるのは、避けなければいけない。
迷った場合は、「#7119」(救急安心センター事業の相談電話)がある。専門家の助言を受けられ、緊急性が高ければ、119番に転送される。
指令センターや市消防局では、明らかに体調に異変があれば、「躊躇せずに119番を」と、呼びかける。
消防隊とともに、市民の生命と安全を守るため、日々活動する消防局員に感謝したい。
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