折り折りのくらし 90

 水木洋子「オペラちゃんちき」が市川で初上演

オペラ「ちゃんちき」初演のプログラム(1975年 二期会、市川市文学プラザ提供)
 9月4日㈯と5日㈰に市川市文化会館大ホールで、いちかわ市民ミュージカル『シネマ・ミュージカル~脚本家・水木洋子ワールド』(吉原廣/作・演出)が4ステージ行われ、3700人を超える観客が、脚本家・水木洋子さんの生涯と作品世界を堪能した。

 ミュージカルの後半には、かわいい幼稚園年長も登場するシーンがあったが、そこで演じられたのが、水木さんの作品「はげやまちゃんちき」の一部を、石川洋光さんの書き下ろしの楽曲によって印象的に見せる舞台であった。

 水木さんの「はげやまちゃんちき」は、元々は、日本舞踊の西川鯉三郎さんの依頼で舞踊劇として1959(昭和34)年に発表され、1975(昭和50)年には、作曲家の團だんいくま伊玖磨さんにより、オペラ「ちゃんちき」にもなった作品である。

 「(はげやま)ちゃんちき」は、キツネとカワウソが、互いに食事の呼ばれ合いをすることになったが、人のいいカワウソはたいそうなもてなしをするのに、キツネはあれこれ言い訳をして、もてなしをしない。カワウソは、キツネにあるウソをつき、キツネは痛い目に遭うという、日本の昔話を元に、水木さんが書いたオリジナル作品。

 元の昔話では、キツネは単独で語られるのが一般的だが、水木さんは、キツネの父親(おとっさま)と自立できない子ギツネ(ぼう)を登場させ、親子の絆きずなを見事に浮かび上がらせる、昔話とは違う作品世界を作り上げることに成功している。

 とりわけユニークなのは、この作品が全編名古屋弁で書かれている点である。 依頼された西川流は、名古屋を中心に名古屋踊りという舞踊公演を重ねている流派。また水木さんも、両親が愛知県犬山市出身で、自身も1945(昭和20)年5月の空襲で、犬山にほど近い親戚の家で疎開生活を送り、1947(昭和22)年に市川へ移り住むまで、名古屋を中心に仕事をしていた。名古屋弁は、水木さんとしても、近しい言葉であったろう。

 日本の昔話を元に、作家が創作性を加えて書く「民話劇」として有名な、木下順二さんの民話劇「夕鶴」が書かれたのは、1949(昭和24)年。1952(昭和27)年には、團さんによってオペラ化されているが、水木さんの「(はげやま)ちゃんちき」は、こうした「民話劇」の文芸史的な流れの上でも、重要な意義を持つ作品といえる。

 しかし、團さんのオペラ「夕鶴」が、繰り返し上演されるのに対し、オペラ「ちゃんちき」は、全編が名古屋弁で書かれていたり、ソロのアリアのような場面がほとんどないなどの理由から、あまり上演される機会の少ない作品でもある。

市川公演のリーフレット
 市川でも、いつか上演したいと思っていたが、水木さんの生誕100年を迎えた今年、市川市オペラ振興会の木村珠美さんが中心となって、市川での初上演が実現することになった。

 木村さんは、全曲の上演も検討してくださったが、より効果的に作品の魅力を鑑賞できるようにと、部分的に省略しても作品の流れを損ねない程度に整理し、約1時間のハイライト上演に仕上げた。

 指揮は神尾昇さん、演出はアンタン・P・パリーさん、狐のおとっさま役に門倉光太郎さん、おとっさまが化けた美人役に木村珠美さん、狐のぼう役に成澤香奈さん、カワウソのかわ兵衛役に宮田圭一さん、カワウソのおかわ役に天下井朱海さん、市川オペラ合唱団の合唱、竹之内純子さんと鈴木美苗さんのピアノ伴奏による上演となる。

 26日午後2時30分から市川市文化会館小ホールで、オペラ・アリアや日本の歌などもお届けするガラ・コンサートとの2部構成で上演される。市川ならではの期待される舞台である。

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